和尚

我が家のお墓を守ってくれる和尚はちょっとおもしろい。イジると、なおおもしろい。意地悪する気は毛頭ないのに、からかいたくなるのはなぜだろう?
昨日は「お彼岸のお経」をあげていただけると言うことで、準備万端待っていたら、大きなマスクをして現れた。もともと大柄な人だけに袈裟を着てマスクをしていると異様な感じがする。開口一番、
「ちょっとウイルス性の風邪をひきまして、ウイルス性だからうつらないとは思いますが・・・」
「えっ?ウイルス性ってうつらないの?信じられない、ホント?」
「はい、お医者さんはウイルス性だからうつらないと・・」
「エーッ?ウイルス性でしょ?私って体弱いからうつるかも・・マスクする!」
このやりとりで、拝みに来てくれた友達は、
「まあ、まあ、気持ちの問題よ。うつると思えばうつる、うつらないと思えばうつらない。私は丈夫だから平気だよ」
と間に割って入ってきた。
結局、私だけがマスクをして正座した。仏壇を置いてある部屋は小さな部屋で、和尚さんが来る前からエアコンを入れて温めておいたのに、何だか妙に寒い。エアコンの効きが悪いなあとつぶやいていたら、主人に
「お前!冷房になってるぞ。寒いはずだよ」
と言われた。
「えーっ?せっかく温めておこうと頑張ったのに・・」
「あーあ、お前らしいな」
と言いながら、エアコンスイッチをいじくっていた。別に風邪気味の和尚に意地悪したんじゃないんだけどなあ。彼は今、熱が37.2°あるらしい。さぞかしエアコンの寒さに悪寒がしたのだろう、お経や、日を何度も間違ったりしていた。そして、そそくさとお経をすませ、出されたお茶を飲んだ。帰り際に、
「あのー、この湯呑みを消毒し、私が帰ったら手をしっかり洗って、うがいをきちんとしてください。そうすればお医者さんも大丈夫だと言いました」
「じゃあ、うつるじゃない!」
声を高らかに荒げた私でした。